震度0 / 横山秀夫 | ぶちぶち日記

震度0 / 横山秀夫

読後の、この虚脱感。 むなしさ。 おそらく、私は警察小説の傑作を読んだのだと思います。 書けている故に、ぐったりです。 


阪神淡路の大震災が起きた日、N県警では警務課長が失踪し、虎視眈々と出世を狙う幹部たちの間に激震が起こります。 互いに弱み強みを握り、相手より優位に立つために、あらゆる駆け引きが繰り返されるのです。


震災の街で、刻一刻と生命が消えていくというのに、そのことに心が動かない幹部たち。 自らその事実に気づき、かすかに傷つきながらも、やはり保身と手柄のことしか考えられない姿にため息がでました。 現実の警察内部がここまで堕ちているのかどうか、そうでないことを祈りたい気持ちです。 とはいえ、ラストでは少々救いも。 世の中、そうそう捨てたもんじゃないはずですよね。 


こうもりに例えられる準キャリアの存在をうまく使っていると思いました。 人物描写は少々誇張しすぎの感がありますが、ほぼ全編にわたって電話や会議の会話で成り立つ小説なので、仕方がないかも。 場面転換は多いけれど、閉塞感を感じつつ読んだのは、動きのない話だったからかな。。。 


震災と物語が密接でないことに、読んでいる間は違和感がありましたが、その乖離こそが実は傑作たるゆえんではないかと思います。 乖離してるんですよ、幹部たちは。