君の名残りを / 浅倉卓弥 | ぶちぶち日記

君の名残りを / 浅倉卓弥

タイムスリップもの歴史小説バージョン?
落雷とともに時代をぐんと遡ってしまった3人の少年少女は、それぞれ同じ時代の別の場所で目覚めます。 大いなる何かの意志を感じ取る彼ら。 いったい何故その時代その場所へ導かれたのか、わからないままそれぞれの場所を見出していきます。。。


主人公たちの名前ととばされた時代から、およそのあらすじはすぐに見当がついてしまいした。 うわ、そういうこと? じゃ、こうなってこうなっちゃうわけ? 大変じゃん! 歴史が不得意な人は、語られるまま物語が楽しめますし、歴史大好きな人は、史実のなか(一部恣意的に変更が加えられていますが)で主人公たちがどう生きていくのか、あれこれ想像しながら読む楽しさが味わえます。


すごい着想です。 タイムスリップというのは定番なわけですが、それをこういうふうに展開する物語があるとは。 ちょこっと「戦国自衛隊」を思い出したり(ある一点で正に共通)しましたが。 


ただ、こういうのを何視点というのか、視点が次々に変わりすぎ、気を抜くといつのまにか違う場所の話になっていたりして、少々読みにくかったです。 この小説には向いているようにも思えるのですが、主人公以外の視点もたくさんあって、中だるみの部分では投げ出しそうになっちゃいました。 相性が良くなかったかな?


もうひとつ、実は肝心なところが納得できませんでした。 彼らがタイムスリップした理由です。 「それは成されねばならぬ。。。」  
歴史パトロールみたいな小説では、変えられた過去を修正するために大活躍、なんて話がよくあります。 なんだかんだいっても、歴史上の出来事は結局必然というか、起こるべくして起こるというか、とにかく歴史の流れには「意志」のようなものがあるという考え方にはよく出会いますし、理解できます。 


翻って、舞台となる一連の出来事が成されるために、何故わざわざ現代の高校生が必要なのかがよくわからないのです。 その時代の人々が成してこそ、歴史といえそうな気がします。 800年間磨かれた剣の道を知る人間が必要? それならもっと適任者がいそうです。 修羅という、また格別な存在まで動員してこの時代を動かそうとするのは何故なのでしょう。 日本の歴史のなかで、この時代はそんなに重要だったでしょうか。 そう考えると、じゃあ、他の時代のさまざまな出来事にも、みなタイムスリップさせられた人々が絡んでいたのだろうか、とかいろいろ考えちゃうのです。 


ラストが切ないだけに、余計に彼らが導かれた理由が気になってしまいました。 そんなわけで、おもしろかったけれど、不満な一冊となりました。