一枚摺屋 / 城野隆 | ぶちぶち日記

一枚摺屋 / 城野隆

第12回松本清張賞受賞作。 そうなんですか。 私にとっては、非常に物足りない、あっけない小説でした。。。


一枚摺に固執する父親に反発し、戯作の道を歩んでいた文太郎は、ある日出くわした打毀しを一枚摺にしました。 しかし、その内容がもとで父親が捕らえられ、拷問を受けた挙句獄死してしまいます。 何故そこまで責められなければならなかったのか。 その死に裏を嗅ぎ取った文太郎は、もぐりの一枚摺屋となり、調査を開始します。。。


明らかになっていく父の過去と、その死の謎が時代設定に密接に結びついていて、異色の幕末物になっています。 普通、一枚摺というのは、気軽な娯楽系のものであることが多かったらしいのですが、文太郎が作るのは、幕府軍の負け戦を容赦なく市井に知らせるためのもの。 だからモグリなのです。 誰が作っているのか知られてはならないし、売っている現場を押さえられるわけにもいかないのです。 時間との闘いで、一気に人目を引いて、一気に売って、一気に逃げる。 そのあたり、なかなかのスリルで楽しめました。


しかし、物語の進め方がお手軽にすぎるし、描写が単純で、あらすじかダイジェストを読んだようなあっけなさを感じてしまいました。 登場人物たちが、物語を進めるためだけに存在するようで、印象に残らないのが残念です。 もったいない!