蝦夷拾遺 たば風 / 宇江佐真理 | ぶちぶち日記

蝦夷拾遺 たば風 / 宇江佐真理

松前藩ゆかりの人々の物語が6篇。 最上徳内の帰郷のもの以外は、女性の心情が描かれています。 


離縁の条件として息子に課せられた100通の恋文に四苦八苦するちょっと微笑ましい「恋文」、藩の政変に巻き込まれる娘たちの健気さ哀れさが心に残る「血脈桜」、泣く泣く振り捨てた男に救われる女の心情を描いた「たば風」が印象に残りました。


宇江佐作品では、芯が強くたおやかに生きる女性が多くみられ、そこが魅力なのですが、今作での女性たちは少し違いました。心根は強くとも、時代の波には抗いようもないのです。 それでも覚悟を決めて生きる姿が哀しくも美しいと思います。 


最後の1篇「黒百合」のラストが、それでも新しい幕の始まりを感じさせてくれました。